虫垂は右下腹部にある臓器であり、糞石等により炎症を伴うと虫垂炎を発症します。
症状は発熱、右下腹部痛等がありますが、大腸憩室炎・腸間膜リンパ節炎・急性腸炎なども同じ症状を呈するため、診断が難しい場合もあります。
また、虫垂炎は炎症の程度によって、
カタル性(炎症が粘膜に留まるもの)
蜂窩織炎性(炎症が壁の全層に広がるもの)
壊疽性(虫垂の壁が壊死に至るもの)
の3段階の程度に分類されます。
壊疽性虫垂炎は悪化すると、虫垂が穿孔して腹膜炎に至る可能性もあります。
虫垂炎の治療は、抗菌剤による治療と手術があります。
抗菌剤による治療を開始しても症状が改善しない場合は、後日手術を行う場合もあります。
当院の手術は臍に小さな切開をおき、腹腔鏡にて行う手術を基本術式としています。
手術は、炎症のある虫垂を根部から切除する手術(単孔式腹腔鏡下手術)を行います。
虫垂の炎症が、周囲の腸管まで波及している場合は、虫垂だけでなく、周囲の腸管を合併切除する、盲腸部分切除術や回盲部切除術を施行する場合もあります。
虫垂炎が穿孔して腹膜炎の所見がある場合には、腹腔内の洗浄を行い、ドレーンという管を留置することもあります。
また、周囲に膿瘍を形成した虫垂炎の場合には、先に抗菌剤による治療や膿瘍のドレナージを行い、炎症を鎮静化させてから手術を行う方法もあります(delayed appendectomy)。
その理由として、そのまま手術を行うと、回盲部切除といった拡大手術が必要になる可能性や遺残膿瘍といった術後合併症の発生する可能性が高くなるからです。先に保存的治療を先行することで、安全な手術が可能となります。
単孔式腹腔鏡下手術について
急性虫垂炎に対する当院の腹腔鏡下手術は臍部を小さく切開し、そこから腹腔鏡及び鉗子を挿入して手術を行う単孔式手術を導入しています。
腹腔鏡下手術の利点は、小さい傷から腹腔内をくまなく観察できることです。虫垂以外の腹腔内の観察も可能であり、併存する疾患の確認もできます。
また比較的若い患者さんが多い疾患ですので整容面にもこだわって、臍部のみの切開で済む単孔式手術を行っています。
実際の患者さんの術後の腹部の写真は下記の通りです。
手術後の手術痕は臍部に隠れてわかりにくくなります。
虫垂炎の手術に関しましては、当院消化器外科外来にて是非お尋ね下さい。